2012年2月20日月曜日

古代のメソポタミア:初期農耕牧畜民(5)



 『出典』図説世界文化地理大百科:古代のメソポタミア・18~27頁
     マイケル・ローフ著・松谷敏雄監訳
     朝倉書店

 古代のメソポタミア:初期農耕牧畜民
 古代のメソポタミア:初期農耕牧畜民

  初期農耕牧畜民(前1万2000~7000年)

 《気候と環境

 過去の気候に関する証拠は多々あり、 かつ多様である。

 たとえば海中における二つ16O、16Oの酸索同位体の割合によつて

 極地に貯えられていた水量がわかり、

 それによって地球規換での気温を知ることができる。

 同様に、沈降作用による堆積物が厚く積もっている場合、

 それは河川水量の増加を意味するから、降雨量が多かったということになろう。

 もっとも有効な研究法の一つは、

 古代の湖の堆積物中に残っている植物花粉を同定することである。

 これによって植生の変化を復元することができる。

 そうした分析結果は地域ごとに一致しないようで、

 それをどう解釈したらよいのかについては議論のあるところではあるが、

 おおまかな様相はつかむことができる。

 氷床が後退し,海水面が上昇するとともに気温も急速に上昇した、

 前1万2000 年から8000 年の間に10℃近くも上がっており、

 後には現在よりも1、2度高くなった。

 氷河時代には北部の山脈地帯の植生はほぼ草原となっており、

 気候は寒冷かつ乾燥していた。

 その後気候は温暖かつ湿潤になっていき、分厚い森林が成長し始めた。

 そうして6000年前くらいまでには今日のように力シなどの木々が

 ザグロスやタウルスの山脈地帯をおおうようになった。

 南部でも氷河期の乾燥・寒冷な気候がより湿潤・温暖な気候へと変化し

 より多くの木々が生育するようになった。

 しかしながら前1万1000年頃までには雨量は少なくなり、

 広大な地城が再び草原や砂漠に戻ってしまった。

 ここ1万年くらいは近東では気候植生とも現在のものとほとんど変わっていない。

 この地方ては四つの特徴的な地域が帯状に認められる。

 まず山岳地帯である。

 ここでは落葉性針葉樹が、カシ、マツ、スギ、トショウなどと混じりあって生い茂っており、

 気候は冬が湿潤・寒冷、夏が乾燥したものであった。

 一方山麗地帯は地中海岸からタウルス,ザグロス山脈のふもとにまで広がっていて,

 冬の気候はおだやかで湿潤、夏は暖かいが乾燥していた。

 植生はかなり開けた地中海性森林で、力シ、マツ、テレビンノキなどの木々、

 また後に栽培化されることになるオオムギ・コムギなどの野生種を合む草本類が生育していた。

 山麓地帯の東南の縁辺部およびイラン・トルコ高原には草原地帯が広がっていた。
 
 気侯は、冬はおだやかで乾燥し、夏は暑くて乾燥したものであった。

 ここには木々はほとんど生育しておらず、草原が広がっていた。

 最後に、アラビア、イラン内陸部の砂漠地帯があげられる。

 ここでは冬はおたやかで乾繰し夏は暑く乾燥しているという気候が発達していたが、

 植物はほとんどなにも生育していなかった。

 こうした地帯間の境界は細かな気候変化にともなって変動はしたが、

 大きくみれば一定でありつづけた。

 ただ河川の流路の変化、湖沼や泉の干上がり、

 砂丘の移動などが狭い地域で変化をおこしたことはあったでおろう。

 さらにいうと、ここ1 万年間に家畜の過剰放牧、森林伐採、人工的な流水路変更など

 人間の干渉が環境を徐々に変えつつある。

 恒常的な水場は生物にとってとくに好適な領域である。

 面積的には小さくとも、それは初期人類にとっても非常に重要な場所であった。

 その種の地域には、海水性・淡水性の生物(動物植物とも)の豊富な海岸湖岸地域、

 タマリスクなどの木々が茂り薮が生えている河川ぞいの地域、

 泉のあるオアシス、あるいは湿原などが合まれる。

 ちなみにべルシア湾先端部近くの湿原では、ナッメヤシの野生種が生えていた可能性がある。

 近東には陸生動物もたくさんいた。

 草原地帯にはガゼル、黄ジカ、野生ロバ、野生ウシなどの群れが生息していた。

 アカシカ、コジカ、野生ヒツジ、野生ヤギなどは山岳地帯により多く住んでいて、

 イノシシは湿潤な環境に生息していた。

 こうした動物を捕まえて生きていた動物には

 ジャッカル、オオカミ、クマ、ハイエナ、チータ、ヒョウ、トラ、ライオンなどがいた。

 小形の哨乳類には

 キッネ、ノウサギ、ヤマネ、コヤマアラシあるいはさまざまな種のげっし頬がいた。

 意外なことにいなかった動物が2種類あるが、それはラクダとウマである。

 それらは水河期に絶滅してしまい、次に現れるのは前3 干年紀であった。

 両生頬や爬虫類は一般的で、カメ、へビ、トカゲ、カ工ルなどがいたし、

 河川、湖沼、海には魚や貝類が生息していた。

 また地中海岸やべルシア湾岸は、

 ロシアからアフリカへの移動路上にあったため多くの渡り島がやってきていた。

 大形の鳥類では

 ダチョウ、ガン、イワシャコ、アヒル、ガチョウなどが有用な食料源となっていた。

 《近東の気候

 近東の雨は西風でもたらされる。

 丘陵や山脈などに風が最初にぶつかったときに雨が降。

 内陸部の多くはいわゆる「雨の陰」に位置している。

 だからたとえばカスビ海の東部やアラビア砂漠ではほとんど雨が降らない。

 トルコとカスピ海の沿岸部を除くと、

 雨のほとんどは冬の間に降り、6 月から9 月までは降雨はない。

 近東の気温は南にいくほど高く緯度とともに低くなる。

 夏と冬の気温はかなり違う。

 海岸部でその差は15℃だが、山岳地帯では25℃にもなる。

 イランやトルコの高山の多くは冬場は雪に埋もれてしまう。

 《参照》

 「図説世界文化地理大百科:古代のメソポタミア」
 「メソポタミア」
 「シュメル=シュメール」
 「ウワイト」
 「シュメル-人類最古の文明:『小林登志子』中公新書」

 『My ブログ』
 古代のメソポタミア
 歴史徒然
 ウワイト(倭人):大学講義録
 ウワイト(倭人)大学院講義録 
 オリエント歴史回廊(遷都)
 古代史つれづれ 
 古代史の画像
 ネット歴史塾
 古代史ブログ講座
 ネット歴史塾
 ひねもす徒然なるままに    
 「終日歴史徒然雑記」
 「古代史キーワード検索」
 
 『参考』
 『言語復原史学会:Web』
 『言語復原史学会:画像』 
        
 『検索』
 GoogleWeb検索
 Google画像検索
 YahooWeb検索
 Yahoo画像検索
 翻訳と辞書
 リンクフリー〔UTF-8 対応版〕

 《参考》
 古代時代の考古学の最新発見・発表・研究成果
 最新の考古学的発掘の方法
 存在価値が問われる我が国の発掘考古学の現状  

0 件のコメント:

コメントを投稿